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あの星に帰る

1月に私の息子が5歳になりまして、やーめでたい。めでたい。よく生きた。えらい。チミえらい。とかなんとか言ってケーキを食べたり笛で動くプラレール北陸新幹線かがやき)を贈呈したりしました。笛で動くプラレールは当然かもしれませんが、走らせようとするたびに笛を吹かねばならぬので、たいへんにうるさいです。ピーピーと。

 

5歳になった息子は相変わらず色が白くてほっぺただけはふっくらもちもちなんですけども、手足も胴も細くなって「おもちくん」という愛称が似合わぬ幼児になって、なんと呼べばいいのかわかりません。

以前近所のコンビニの店員にフワフワモジャモジャしたパーマネントをかけている若者(男)がいて、私はその人を「モジャリン」と名づけていて、行くたびにパンを並べかえたりコピー用紙を補充している姿を見ては「今日もがんばってるなあ。モジャリンはほんとうに働き者だ。私もがんばろう」などと思っていたのですが、そんなモジャリンがある日突然頭髪を全部剃っていたことがあって、もう完全に剃り散らかしていて、以後なんと呼べばいいのだろう、元モジャリン? そんな元ちとせみたいな呼びかたでいいの? とめちゃくちゃ戸惑ったことを思い出しました。とりあえず元おもち、以下もともちと呼びます。字面がもこみちに似ていますね。ちょっと誰か~! オリーブオイルオリーブオイル!

 

息子(もともち)は最近、あることにはまっています。それは母を「宇宙船が落っこちて地球にやってきた宇宙人、見た目は母そっくりに擬態している」という存在に見立てて遊ぶことで、たぶん保育園でそういう絵本を読んだのか、このあいだレンタルして見た『ウルトラマンマックス』にそんなお話があったか、どちらかだと思うんですけど、そういうわけで私は、ここ一週間ばかり息子からずっと「宇宙人さん」と呼ばれているのです。朝、保育園に送って行く時に「みんなには君が宇宙人だってこと、ないしょにしとくからね」とか耳打ちされたりもしているのです。お夕飯の時には「地球のごはんはおいしいよ!」とか言っておかずを分けあたえられたりもしているのです。ウン知ってる……だってそれ私がつくったもん……などと言ってはいけないですよね。ええ、絶対に。

 

もともちは地球人代表として、とにかく宇宙人にやさしくしなければならないと思っているらしく、なにかと私の世話を焼きます。シャンプーをしている私の頭にシャワーで比較的熱めの湯をあびせかけてきて「ちょっあついけんやめて」と断っても「遠慮しないで~」とか言ってぜんぜんやめない。シャンプーの泡は地球外生命体には毒だと思っているに違いありません。あと話をききたがる。私がかつていた星の話を、ものすげえききたがるのです。

「どんな宇宙船で来たの?」

「どんな星なの? テレビはあるの?」

「いつかは自分の星に帰っちゃうの?」

質問攻め。でも無視するわけにはいかないので、適当に答えるんですけど。私がかつていた星のことを。「緑ゆたかな平和な星でした。でも、ある日とつぜんやってきた侵略者にすべてを焼き尽くされたのです、命からがら焦土となったあの星から逃げのびてきたけれども、私はいつかきっとあの星に帰る、そしてかつてのうつくしい風景を取り戻してみせる」とか答えるんですけど、喋ってるうちに涙がつつーって流れてきてビックリしました。自分の作り話に泣くて。

あときのうは「ぼくにだけ正体を見せてよ~」と言って私の腹や腕のやわらかい部分をつまんできました。あれかな、コレの中から宇宙人出てくると思ったのかな。違う。お母さんの皮下脂肪は宇宙人の隠れ蓑なんかじゃないんだ。つい設定を忘れて「お母さんのおにくは純然たるおにくです!」って叫びましたけど皆さん、「純然たるおにく」って言葉の響き、あんがい悪くないと思いませんか。私は思いません。