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素敵なお母さんになれませんでした。

私がこどもを生む前に夢想していた「素敵なお母さん」というのは毎日絵本を読んであげて『ぐりとぐら』の頁を見ながら「おいしそうだね」「食べたいね」とか言い合って実際フライパンでカステラ作りとかして、そしてこどものTシャツにクロスステッチでパトカーの刺繍とかいれてあげて、そしてそして「お昼寝中の息子の寝顔を見つめていると愛しさがこみ上げてきて、たとえ胴体がちぎれてもこの子を守りたいと思いました」とブログに書くようなそういうお母さんだったんですけど、実際の自分の育児の有り様は憧れていたのとは違うよね。もう全然違うよね。(ちなみに寝顔のくだりは実際に数年前育児雑誌の投稿で読んだ文章です。寝顔を見守る母の慈愛と「胴体がちぎれる」という表現のギャップが強烈過ぎていまだに忘れられない)

まずあれだよね。絵本の読み聞かせね。一応寝る前やってるよね。うん、やってる。息子(3歳)が本棚から自分で読みたいものを選んでくるシステム。私としては『よるくま』とか選んでほしい。ていうか選ばせる気満々で一番目立つとこに配置してるから。「あぁ、あったかい。お前はあったかいねえ。今日はこのまま抱っこして帰ろう」のくだりを情感たっぷりに読み上げる準備いつでも出来てっから。でも息子は『テレビマガジン』を持ってきちゃうんだよ。わかります? どんな雑誌か。仮面ライダーとかウルトラマンとかが沢山載ってる、そういうヒーローが好きなこども向けの雑誌です。読みすぎてボロボロだよ。ここ一週間毎晩「トッキュウ2号のきまじめバトル!」とか「カネゴン……お金を食べるかいじゅう。悪意はない」とか「プレゼント当選者発表」とかいうくだりを読まされとる。なんかこう、憧れてたのと違う……と思いながら読んでる。

あと保育園の先生から「おもちくん(仮名)とお家でどんな遊びをしてますか」って訊かれたんですけど、本当のことが答えられない。夫のスネ毛をむしって遊んでますなんて絶対言えない。しかも私のほうが率先してやってますなんて言えるわけないよ。だから「ブロック遊びとか、ですね」って答えたよ。素敵やろ。ブロック遊びするお母さん。こどもの創造性育んでる感じをビシバシ発しとるよこれは。
そしたら先生がニコニコしながら「おもちくんね、いつもいっぱいお話してくれるんですよ!『きのうお父さんをぶっちーんしたのー』とかね。ウフフ」とか言い出してさー、私しゃ心の中でバレてるー! って叫んだよ。完全に私達の愉快なスネ毛むしりが白日のもとに晒されとるーッ! って。もうね、ダメだと思った。さよなら私の憧れ。天竺より遠い私の憧れ。きっと保育園では寺地さんじゃなくて「むしりさん」って呼ばれてるよ。私しゃそんなへんな名で呼ばれて後ろ指さされるために故郷を捨てて大阪に出てきたわけじゃなかッ!

もういい。あきらめた。どだい私が素敵なお母さんを目指すというのが間違いだったんだ。酒に酔って袖口に餃子入れて帰ってくるような女が、そういうギャグ体質(生きてるだけでへんなハプニングに見舞われる体質の意)の女が、出産したぐらいで生まれ変われるわけがなかったんだよ。どうやったら袖から餃子が入るんだってみんなに言われたけどこっちが知りたいよ。一体どうやってお前忍び込んだのよ。忍者なの? お前は忍たま餃子太郎なの? ってね、話しかけたよ私は。餃子に。
ハハハまったく、あさはかだねあたいは、ちいとも素敵に生きられやしねえっていうそんな話を夫にしたら、夫が「大丈夫だよ気にするなよ。そんなことより痩せろよ」って慰めてくれたので嬉しくて、心からスネ毛むしってごめんねって思いました。グレートスネモジャマンとか呼んでごめんなさい。これからもむしらせてください。